[世 界]
奇術の歴史は古く、その起源はじつは明かではありません。ただ、奇術は文明の発祥と同じところで誕生し、3〜4千年の歴史があることだけは間違いありません。たぶんその発生は、原始呪術の時代までさかのぼると思います。
そんな中、最も古い記録として残っているのが、紀元前1700年ころのエジプトのパピルス。奇術師がクフ王の前で、ガチョウの首を切ってまた元通りにしたという伝説が記されています。
そしてギリシア時代になると「カップと玉(Cups and balls)」という、3個のカップと3個のボールで演じる古典奇術(中国では「三星帰洞」、日本では「品玉の術」と呼ばれている)が、街頭の奇術師の手で行われたという記録が、これまたエジプトの洞窟の壁画に描かれているそうです。
しかし中世にはいると、キリスト教の普及と同時に、奇術は衰退しその技術的進歩も一時停止します。そう、魔女狩りの時代です。不思議なワザをみせる人は、悪魔と接触した危険人物として見なされ、火あぶりにされたりしてしまったそうです。コワイですね。そんな、うっかり手品もできない間、奇術はジプシーや旅芸人の間で細々と伝えられていたそうです。
そして中世の宗教的呪縛から解放されたのは、ルネッサンス以後とのこと。1584年にロンドンで、世界で初めて英語で書かれた「奇術解説書」が刊行され、50種の奇術の種明かしがつけられいました。またこの著者は奇術師ではないというのが当時の面白いところ。そう、世に染みついた「手品=悪魔の存在」というイメージをなくすために、「ホラ、こうすれば人間の手で合理的にできちゃうんですよ!」と証明するために書いたんだそうです。
そしてそして!奇術自体が独立した芸能として、小屋がけの大道芸からステージショーへと移り変わっていったのが、17〜18世紀になってから。そのあたりからようやく現代のような、娯楽としてみせて楽しませる演芸になっていったようです。
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