公式ガイドカメラマンが語る大井川鐵道の魅力とは

森島 吉直
1975年静岡県生まれ、日本大学芸術学部卒。(株)しずおかオンライン出版制作部所属カメラマン。「大井川鐵道公式ガイドブック」を担当。本誌制作では約1年間に渡り、撮影。現在でも大井川鐵道を訪れ、魅力を発掘する日々を過ごす。

公式ガイドブック撮影の舞台裏

2010年の初秋から始まった「大井川鐵道公式ガイドブック」の撮影。
取材をはじめるにあたり、確認することがありました。それは、
『大井川鐵道のどこにレンズを向けるのか?』
ということです。そこで、まずは、とにかくいろいろな列車のシーンを撮影することにしました。
沿線で撮影をはじめると、たくさんの人が笑顔で声をかけてくださいます。

「こんにちはっ!」「先週、三脚を忘れていかなかったかい?」
「この熱い日に、水筒空っぽ?この冷たいお茶あげるわ。」
「撮影?よかったら、僕の家でお茶でも飲んでいかない?」

撮影というと、好奇心の眼で見られることも多いのですが、ここでは、カメラマンの存在はごく当たり前のようです。そのあたたかさが嬉しかったです。

別の撮影で島田市内のお宅へお邪魔した時のこと。
玄関にSL列車の運転復活がはじめて開始された時の記念プレートが飾られています。
地域の人にも愛される鉄道、沿線地域のあたたかさも大井川鐵道の一部。そんな気がしました。

SL列車運転復活記念プレート。公式にアナウンスされている営業開始初日は1976.7.9だが、このプレートは1976.7.8。この日に、鉄道関係者と監督官庁の来賓を乗せた試乗列車が走ったときの記念品

大井川鐵道を撮ることを通じて、誰に対してもあたたかく接する人と人の有り様を撮りたい!
これで、レンズを向ける方向が決まりました。

それを、具体的にどう画面にしたら良いか?
ある夏の日。地域の人が休日に大井川の流れの緩やかなところで川遊びをしているイメージがわきました。向かった先は、家山近くの小川。河原で、たくさんの人が楽しんでいます。

ポ~!ボッ!ボッ!ボッ!ボッ!
遠くから汽笛が聞こえドラフト音が響きます。

「・・・SL?SLだよね!?」
あちこちで、童心に帰った声!

橋梁にガタガタと蒸気機関車がさしかかり、ひかれた客車の乗客と目があった途端、河原のみんなと乗客がいっせいに手をふりあいました。列車が、人を結んでいました。

これだよ!これ!これが、撮りたかったんだ!
かわね路号が長い汽笛を山間にこだましながら、ファインダーから消えました。


最後に、余談ではありますが、
大井川鐵道の列車を撮影するならば、是非手に入れたいものをご紹介します。
それは、新金谷駅で販売しているお弁当。
撮影行となれば、食料を事前に仕入れてから出かけていくものですが、
ここのお弁当は手作りそのものの優しい味付けで、おかずだけでなく米もおいしい。
線路際で一息入れると、旨さ格別です。

※掲載内容は2012年4月取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる場合があります。
※当社では、施設・イベント等に関する個別のお問い合せにはお応えいたしかねますのでご了承ください。
※掲載されている情報の変更・削除のご依頼はこちらからお願いいたします。