インターネット24時
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「おいJ夫、大変だよ、J夫…!」

オフィスで隣席に座る先輩・Nが、いつになく取り乱した表情でJ夫に呼びかけた。

「これさ、ウイルスじゃないか?」

J夫がNのパソコンを覗き込むと、デスクトップにあるアイコンがすべて、かわいい熊の顔に変わっていた。
J夫が口をあんぐりと開けてディスプレイを見ていると、脇に開いていたメールソフトがすごい勢いでスクロールを始めた。
Nの声がひっくり返る。

「わぁ!今度はスパムメールだ! それもこんなにたくさん!? おいJ夫、なんとかしてくれ!」
「そ…そんなこと言われても…はっ、そうだ、ウイルスやスパムを立ちどころに退治してくれるソフトがUSBメモリに」

J夫が慌ててポケットをまさぐる。青ざめるのはJ夫の番だった。

「あれ? な…ない…どこだ? 確かにここに入れたはず…こっちのポケットか?…え?耳の上?いや、ない…まさかなくした? なくしたんだ! あああ、お客さんのデータも入っているのに…」

そこへ課長が割って入ってくる。

「おいJ夫! こないだ教えてくれたお客さんのWebサイト、あれ詐欺サイトじゃないか! 間違ってクリックしたら、へんな請求が舞い込んで来たぞ。どうしてくれるんだ!」

続いて顔を出したのは部長だ。

「おいJ夫! システム部から苦情だ。部内で使っている無線LANルータの暗号化方法が古いままで、情報がダダ漏れだっていうんだが、キミなんとかしろ!」

J夫はわけがわからなくなった。なんで今日に限ってこんなに…しかもぜんぶオレに降りかかって来るんだ?

「ちょっとパパ!」 なんと、今度は妻がオフィスに飛び込んで来た。「娘が…! 学校裏サイトでいじめられて、もう学校に行かないって泣いてるの。みんなあなたが悪いのよ!」

「あ〜、J夫さん? お取り込み中。警察の者です。先日、大手企業に脅迫事件があったのはご存じですか? メールの発信元があなたのパソコンなんですが、ちょっと署で事情を…」

呆然とするJ夫。他にも、ノートパソコンを脇に抱えて鬼の形相でこちらへ駆け寄って来る男たちの姿が目の端に見えた。

おいJ夫…おいJ夫…頭上から降りかかって来る声また声が耳の中でこだまする。J夫はついに目を回し、床に突っ伏した。



「おい、J夫、おいってば」 J夫は気がついた。NがJ夫の肩を揺り動かしている。顔を上げると、突っ伏していた机の上に500円玉大のヨダレの跡が見えた。

「あ、起きた! お前さぁ、夕べ残業で遅かったのはわかるが、オフィスで爆睡、しかも大声でうなされるとは何事」

周囲にいた同僚たちに笑いが広がった。

「夢…だったのか…」 J夫は呆けたような表情で説明した。

「ふーん、あんなに無頓着だったお前がそんな夢を…。ちょっとは考えるようになったんだな」
「いやぁ、参りました」
「しかしまぁ、よくもそれだけ並んだな。ネットの脅威は果てしないってことか。これからもいろいろ気をつけないとな」

Nは笑ってJ夫の肩をポンと叩いた。

その向こうにあったJ夫のパソコンの中で、カリっと小さな音をたてて、一つのアイコンが熊の顔に変わったのに気づいた者はいなかった。


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解説
セキュリティの課題は、心の鍵を確かめ続けること



発見から5年以上も経ったウイルスが今だに検出数トップを占めていたり、はた目には「なぜそんなのに騙されるの?」と思えるようなフィッシングやワンクリック詐欺が後を絶たなかったり、さらには情報の紛失や漏洩、甘いパスワード、脆弱性の発見…といった話題が繰り返し登場します。これらは技術的な問題というよりは、人間の弱みが生み出す永遠の問題なのかも知れません。
皆さんには、ひとつ対策を施して安心するのではなく、見落としている隙や穴がないか、いつも心がけていただければと思います。



事件の教訓

セキュリティ その闘いに 終わりなし


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