インターネット24時
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「ねぇねぇ、きのう中学生同士の傷害事件があったでしょ。あれ、実家の近所だったんだよー」
「ええ!? 怖いねー。近ごろそういう事件多くない?」

昼下がりの喫茶店。仲の良い主婦たちの他愛のない会話の一こまである。話題を振ったのは、関東近県に実家のあるC美。答えたのはD子。このやりとりに、訳知り顔のE江が割って入った。

「あ、それって朝のテレビで見たけど、なんだかインターネットのプロフで知り合った同士で、お互い面識はなかったっていうじゃない。世の中どうなってるのかしらね」 「え? プロフってなに? ブログ?」
「いやいや、プロフはプロフ。なんでもね、自分のプロフィールとか関心のあることとかを公開して、住所が近い同士や同じ趣味の人同士が仲良くなる場所を提供するサービスなんだって。テレビの受け売りだけど(笑)」
「へぇー、そんなのあるんだぁ。見たことある?」 D子がC美に問いかける。
「いや、私もテレビで見ただけで、実際にアクセスしたことなないな。プロフィールをネットに載せるだけで友達になれるもんなのかな?」

E江が説明を始めた。

「ブログとかってさ、そうそう毎日は続けられないじゃない。その点、プロフは一度登録すれば、あとは項目をちょこっと直したり、写真を換えたりする程度だからラクみたいなんだよね。それを基点にして、コメントがついたり、メッセージのやりとりしたりとかするみたい」
「でもさー、なんで傷害事件になるのかしら」
「やっぱりアレじゃない? 掲示板サイトとか学校裏サイトとかあるけど、悪口の言い合いなんかもあるんじゃない?」
「へぇー、ネットってなんだか怖いねぇ」
「けっこう流行ってるの?」
「ケータイで見られるんじゃない? 検索したら出てこないかな? ちょっと見てみよっか」

3人はそれぞれ自分のケータイを取り出し、画面に見入った。

「えー、なにこれ、学校名やクラス名が書かれてるじゃない。あ、こっちは普通に名前が出てる…ハンドルネームかな? 実名っぽいけど…?」
「顔写真も普通に出てるね。あ、こっちはなんだかコメント欄でけんかしてるよ。こういうのがトラブルになるんじゃない?」
「ちょっとナンパっぽい発言もあるね。あらっ、こっちの写真はこれ…下着姿??」
「え? どれどれ?」
「いやぁ、反応早すぎ(笑)」

笑いにまぶされてはいたが、彼女たちは次第に落ち着かない気分になって行った。傷害事件にまで発展するほどの中傷、個人情報やわいせつ情報への無防備さ、子どもたちの、果てしなくエスカレートするコミュニケーション…。

誰からともなく顔を上げ、3人は同時に同じせりふを口にした。「うちの子、だいじょうぶかしら?…」 声が重なっていつもなら爆笑になるシチュエーションだが、空気は重いままだった。


この事例は、実際にあった"プロフをめぐるトラブル"の事例をもとに脚色、再構成したものです。


解説
入りやすいサービスは「出口」も緩い



比較的手軽に参加でき、共通の趣味・話題などでごく淡いコミュニケーションを楽しめることから、小中学生など比較的低年齢層の間で「プロフ」が流行っているといいます。ただ、この気安さが問題をはらんでいるのも事実。文中でも取り上げたように、個人情報に無防備だったり、誹謗中傷が横行したり、アクセス数を稼ぐために過激な情報を公開したり、さらには悪意のある大人の目に止まって犯罪に巻き込まれるケースもあります。利用には他のインターネットサービスにも増して注意が必要です。


事件の教訓

親の目と 子どもの自覚で よいネット


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