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「あ、当たった…いや当たった…」

いつも沈着冷静なNが、オフィスのパソコンの画面を見つめながら呆然としたおもむきでつぶやいた。

「い…一千万…当たった…」

「どうしたんですか、先輩! 手、ふるえてますよ」

その様子を見とがめた臨席のJ夫が、思わず声をかける。

「いや…当たったんだよ…現金。一千万円。いつも使ってるクレジット会社から…メールが…届いて…今月の利用者の中から…抽選…当たった…。あ…なぁ、一千万あったら、家が建つな?」

「建ちませんよ! でも一千万なんてほんとですか?」

「ほんとだよ…ほら、書いてある…口座番号と暗証を入力しろって…急いでやらなきゃ…やった、やった…」

「え? ちょ、ちょっと待ってくださいよ先輩、そのメール、ちょっと見せてください」

J夫は、ただならぬ雰囲気になんとなく慌てながらNのパソコンを覗き込む。

「あっ、先輩! これフィッシングですよ! だってこのメール、オレんとこにも来たもん。オレ、このクレジット会社、使ってないですよ! もちろん懸賞とかにも応募してないし!」

「え? あ、はぁ?」

「先輩! なに変な声出してるんですか、しっかりしてくださいよ。第一クレジット会社が、なんで改めて振込先の口座知らせろなんて言うんですか。おまけに暗証番号まで…」

「なんだって? だってオレ、こないだ懸賞に応募して…いや、あれ? そ、そうか…」

Nはようやく我に返った。
メールは確かに、クレジット会社が送信したことになっている。懸賞に応募したのは事実ではあったが、そういえば当たるのは何万円分かのクレジット利用権であって一千万円などという現金ではない。また、応募締め切りの期日さえまだ先のはずだった。

どうやらそれは、その懸賞キャンペーンに乗じたか、もしくは単に偶然のフィッシング詐欺メールらしかった。送信元は偽装されているのだろう。

「たはー、すっかり引っかかるところだった…。よりによってお前に助けられるとはなぁ…」

「な、なんつー憎まれ口を…。先輩、いつもちゃんとわかってる人でも引っかかるっていういい例ですね! 気を付けてく・だ・さ・い・よホント! がっはっはっ」

Nは、ホッとしたやら情けないやらの微妙な表情で、J夫の勝ち誇った顔を見つめるばかりだった。


この事例は、実際にあった"フィッシング詐欺メール"の事例を脚色、再構成したものです。
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解説
フィッシングメールにも、騙される「TPO」がある



スパムメールの猛威は増すばかり、しかも、金銭目的やフィッシング詐欺目的のものも増えている…と聞くと、「迷惑」メールとばかりも言っていられませんね。あらかじめソフトやプロバイダの機能を使ってスパム対策を施しておくことも重要ですが、まずうまい話に飛びつかない、という基本的な心構えも忘れないようにしたいものです。
スパムメールは、季節催事、タレントやスポーツがらみなど話題のことがらや事件に乗じたり、さらには公的な企業・機関を騙って来るものもあります。手を変え品をかえ、とにかく目に留まらせよう、開かせようという魂胆です。今回取り上げた事件のように、ふだん十分に気を付けている人でも、タイミングやその内容によっては簡単に引っかかってしまうということもありますので、ご注意です。



事件の教訓

フィッシングは 「心の隙」を 狙ってる


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