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「うーん、逃したかぁ…」
M山は、パソコンのディスプレイを前にして思わずうめいた。
滅多に市場に出ないビンテージもののカメラがネットオークションに出品され、満を持して入札に参加したのだが、わずかの差で落札できなかったのである。2年もウォッチしていて初めて出て来た商品なのに…。程度も良さそうだったのに…。あともうひと頑張り値を張り込めばよかったのに…。後悔の思いは巡ったが、後の祭りというしかなかった。取りあえず次の出品を待つしかないよな…。M山は、失意の中でパソコンの電源を切った。
それから1週間ほど経ったある日、一本のメールが届いた。それは、あれ以来なんとなくもやもやしていた胸中の霧がぱっと晴れるような内容だった。
「突然のメールで失礼します。先日カメラを出品しました、xxx_xxxxことH田と申します。実はあのオークション、落札者様の身内にご不幸があったということで、やむを得ずキャンセルされることになりました。落札者様は、突然のことでもあり、また悪い“評価”をつけたくないということで、次点の方との差額と送料を負担したいと仰っておられます。私もご事情をお察しし、受諾することにしました。つきましては、次点のご入札をいただきましたM山様に、ご入札された金額でこの商品をお引き取りいただけないものかと、ぶしつけながらメールを差し上げた次第です。…」
M山はすっかり舞い上がった。夢にまで見たあのカメラが手に入る! しかも、落札決定額より少し安い自分の設定額。送料も不要…! キーボードをまさぐる手ももどかしく、M山は相手の銀行口座を確かめ、ネットバンキングで代金約15万円を振り込んだ。
あと数日で、オレもオーナーになれるんだな…。そのカメラを手にした自分を想像して、ついにやけてしまうM山であった。
ところが、カメラは送られて来なかった。
メールで催促を出しても梨のつぶて。意を決して、メールに書いてあったナンバーに電話をしてみたが不通。ネット検索で住所地を調べてみたが、その場所には、なんと住宅らしきものがなかった…。
知人にこのことを話してみると、「それは次点詐欺ってやつじゃないのか? TVニュースでも見たが、近ごろ多いそうだ」ということだった。出品者を装い、高額のオークションの入札履歴を見て、入札者にメールを送る。入札者はもともと商品に興味があるから、つい騙されて代金を振り込んでしまうのだという。
詐欺…?
M山は、落札を逃したどころではない落胆が自分の中に広がって行くのを感じた。
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この事例は、実際にあった“オークション詐欺”の事例を脚色、再構成したものです。 |
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解説
喜ぶ前に、「待てよ?」と確認を怠らないのが吉。
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次点詐欺」は、入札者(次点者とは限らない)を狙い澄まして代金を騙し取ろうという手口で、最近よく耳にするオークション詐欺のひとつです。「他にも在庫がある」「心配なら現物をお見せする(わざと遠方の住所を詐称)」「フリーメールではなく、プロバイダのアドレスからメールした」などいかにも信頼できそうな引っかけ文句が使われる場合もあります。
このようなメールを受け取ったら、メールの送信者が本当に信頼できるか(IDやメールアドレスの確認)、当該オークションが実際に不成立だったか(「良い評価」を確かめるなど)、振り込み先の口座番号や名前が、オークションサイトが公開している「トラブルリスト」などに該当していないか、別角度の写真や代金引き換えといった、確実に商品を確かめられる方法が要求できるかなど、二重三重の確認を行った方がよいと思われます。
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