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「はい、みんなちょっと聞いてー」
いきなりオフィスに入って来て大きな声を張り上げたのは、総務のS部長だった。
もともと声がやたらに大きいことでは悪名高いS部長だが、最近社内のウイルス騒ぎのせいで、ひときわ煙たい存在になっていた。
「え、またかよー」「今度は何ですかぁ?」と揶揄とも非難ともつかない声が部屋の面々から上がる。先日、社内メールにコンピュータウイルスが混入した時にも、まるで魔女狩りさながら、社員のパソコンを開かせては根ほり葉ほりチェックし、何も見つからなくても余計な一言をまき散らしていったばかりなのだ。社員たちがうるさがるのも無理はない。
「相変わらずな、Winny関連の流出被害が巷を騒がしてるのはみんなも知ってると思う。どうにもチマッタことだ」
もちろん、誰も笑わない。
「でな、念には念をということで、今日はみんなに一筆書いてもらうから。いや中身は簡単。社内の情報を家に持って帰りません。社外のパソコンを会社に持ち込みません。Winnyは決して使いません。そんなわけだから。署名・捺印して、必ず守ること!」
「部長―、Winnyは別に悪くないんですって。ウイルスが…」
誰かが言いかけたが、部長は「いいんだよ!」と一喝して、1枚ペラの用紙を配り始めた。
まぁ、内容はそれなりにもっともなことだったが、なにも署名・捺印まで集めなくても…。そんなオフィス内の空気が、居心地のよくないざわめきとなって表れていた。
「結局さ、自分も好きだったりするんじゃないの?」 隣のTが囁きかけてきた。
「さあどうだかなー。屁と火事ははもとから騒ぐ、なんてことわざもあるしね…おっと失礼?」
「ははは」
1週間ほどたったある日、そのTが興味しんしん、といった面もちで席に戻って来て言った。
「おいおい、聞いた? S部長! 盗難にあったらしいよ」
「盗難? なに盗まれたの?」
「それがさ、自分のノートパソコンなんだってよー。噂では、コンビニに寄った時に、エンジンかけっ放しで買い物してたんだって」
「あ、それって典型的…」
「そうそう、その隙にカバンごと…」
「やられた、と…」
「で、話はさらに続きがあって、そのパソコンには、わが社の社員名簿や売上データが見事に入っていたという…」
「えー!? なんだよ、こないだ“社内の情報を持って帰りません”っておれたちに書かせたばっかじゃん!」
「だよなー。ウイルスが、セキュリティがって言ってる間に、基本を忘れたって感じ…」
噂話があたかも火事のように社内に広がっている頃、S部長が専務から大目玉を食らっていたのは言うまでもないことだった。
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この事例は、実際にあった“パソコン盗難”の事例を脚色、再構成したものです。 |
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解説
セキュリティ、その基本中の基本とは
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ウイルス被害による情報流出のニュースがなくならない一方、オフラインでの情報流出とも言えるパソコン盗難も相次いでいます。フィッシングなどネットワーク悪用の情報盗難よりも、財布やカードの紛失・盗難による個人情報盗難が3倍も多いという調査結果もあります。(Javelin
Strategy & Research社調べ、2006年1月)
オンラインでのセキュリティ対策ももちろんですが、パソコンなどを盗まれないようにする、盗まれても容易に内容を読み取られないようにする(パスワードによるロックや暗号化)、などのいわば「基本」も忘れないようにしたいものですね。
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パソコンは、中身も含めて重要な資産です。
盗まれない・覗かれない・使われないよう気をつけましょう!

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