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「そうだよね、絶対、うちに来たいよねー…」
K子は思わずそうつぶやいて、思い切った金額を打ち込んだ。

ある大手のオークションサイト。K子の大好きな人形シリーズのひとつが出品されていた。
このシリーズは、ちょっと麻薬的な魅力を持っている。店頭もよくチェックするが、オークションサイトもK子は日課のように覗いていた。そして気に入った人形が出ると、「また買うの?」と自問しつつも、つい入札してしまうのだった。

それは、このカテゴリーで以前にも見かけたことのある出品者からの出品だった。
…叔母が先日、病気で亡くなりました。彼女のコレクションを業者に譲り渡すのも気が引けるので、大切にしてくださる個人の方に引き取っていただきたい…そのような説明がつけられ、30点ほどがまとめて出品されていた。そして中には、30数年前のシリーズも含まれており、なかなかの値打ちものが揃っていた。

K子は、その中の一点に目を奪われた。以前、雑誌か何かで見て気に入ったのだが、到底手に入らないだろうと思っていたものだった。既に何件か入札があり、小さくない金額になりそうな雰囲気だった。K子はいても立ってもいられなくなった。 いくらだったら落とせるだろう…K子は考え、そして思い切った金額を打ち込んだのである。

期限の日を迎え、K子は落札した。結果的にその金額までは行かなかったものの、相当な価格であった。ちょっと後ろめたいようなホっとしたような微妙な空気の中で、K子はその“子”に思いを馳せた。
しかし…人形は届かなかったのである。
入金まではメールで連絡がついた。しかし、銀行振込が完了してから1週間経っても2週間経っても、商品は届かない。メールを打っても返事は来なくなった。
まさか、だまされたのでは…?
出品者の履歴を改めて見てみた。当たり障りのない20数件の商品に関する「良好」の評価があるばかりで、特に怪しいところはない。しかし、人形の写真は、そういえばどこかWebサイトに掲載されているような、カタログ的な表現のような気がしなくもない。

K子は、なすすべなく呆然とするばかりだった…。
この事例は、実際にあった“ネットオークション詐欺”の事例を脚色、再構成したものです。


解説
ネットオークション・・・その商品や出品者は信頼できるか?



インターネットオークションは、手軽に、また希望の価格で気に入った商品を売買できることから人気の高いサービスです。しかし、取引にまつわって意外にトラブルの種が潜んでいることも事実です。
例えば商品がないのに出品し、そのまま雲隠れするというケースは少なくありません。今回の事例のように、落札/応札を相互に評価して信頼度の目安とするサービスを逆手にとり、「良好」の評価を高めておいて、ある時手のひらを返したように罠をしかける(出品と見せかけて、代金だけを詐取する)、などの巧妙な手口も出現しています。
オークションに応札する際は、由来や出品の説明、出品者の過去の履歴などが十分に信頼できるかどうか、添付されている写真は出品されているものと同一と思われるかどうかなどについて、まず冷静に考えてみた方がいいかも知れません。



事件の教訓

魅力あるものにこそ、罠が潜んでいる…
ネットではそのことを忘れないようにしましょう!



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