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「身に覚え」が生んだ悲劇

「え? た、大変だ・・・」
A男はある日、威圧的なメールを受け取った。“最終和解案”と題されたそのメールは、“あなたの利用したインターネットアダルトコンテンツの使用料が振り込まれておりません”という書き出しで始まっていた。そして、「当方は回収代行業者である、これまでも請求を行なって来たがこれ以上は待てない、貴下の個人情報開示をプロバイダに請求し、あらゆる手段を使って利用料および延滞手数料の回収を行う、金融業者ではないので強引な債権回収を禁じる法律には縛られないのでそのつもりで・・・」などと脅しめいた文句、そして振込先口座番号と、計10万円余りの計算式が並べられていた。
A男には、アダルトサイトと登録や契約をした覚えはなかったし、これまでに請求の連絡を受け取ってもいなかったが、そういうサイトをこれまでにこっそり見たことはあったので、内心青くなった。「知らないうちに登録ボタンを押してしまったんだろうか?」「よく見なかったけど、有料だったんだろうか?」 こうなると、悪い方の思考ばかりにとらわれてしまう。「こわもてのおにィさんが取り立てに来たりしたら大変だぞ・・・」 そう思うとA男は大きな不安にかられて、そこに書いてあった少なからぬ金額をついつい指定先に振り込んでしまったのである・・・。

* 1カ月ほどして、A男は“悪質インターネット業者、逮捕”という新聞の見出しが目に入った。そしてその手口のひとつを読んで驚いた。不特定のホームページやBBSで拾ったアドレスに無作為にメールを送りつけ、不安を煽ってはありもしない“利用代金”を振り込ませていた、というのである。自分が振り込んだのは、まさにこれじゃないか!? 詐欺にあったのか・・・とA男は落胆したが、すでに後の祭りなのであった。
この事例は、実際にあった“詐欺事件”の事例を脚色、再構成したものです。
シマンテック セキュリティ レスポンスでは、“ウイルス情報を装って人を惑わせる”デマウイルスの情報もお届けしています。悪質なウイルスに警戒するとともに、このようないたずらにも気を付けましょう。

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解説
魔手は、心のすき間に入り込んでくる



インターネット時代といっても、詐欺などの犯罪は意外に古典的手法がまかり通っています。マンションの郵便受けに「家賃の振込先が変わりました」というチラシが投げ込まれた事件は記憶に新しいところですが、今回取り上げた事件や、金融業者を装って「貸した金がまだ払い込まれていない」というメールなども、構造はまったく同じです。ちょっと冷静に考えたり、再確認を取ればすぐ怪しいと気づくことにも引っかかってしまうのが人間の弱いところです。ひょっとしたら・・・?と思うような経験が過去にあればなおさら。犯人は、そこへ巧妙につけ込んで来るわけです。根拠のないものは払う必要もありませんし、強引な取り立てなどを恐れることもありません。弱気を見せないのが、撃退のポイントです。
このほか、「高額商品が安い」「○○のチケットが手に入る!」といったメールや、いわゆる不幸のメール(チェーンメール)、「○○というファイルはウイルスなので削除しよう」というデマウイルス等々、相手の関心事につけ込んで損害を与えようとやって来るメールの例は枚挙にいとまがありません。
こうしたメールに対しては、単に返答しただけでも「このメールアドレスは生きている」と知られ、次々変なメールが舞い込んだり、別の業者からも“お得意さん”と目をつけられたりしかねません。
一方的に送られてくる「脅し」や「うまい話」には、たいてい落とし穴がつきもの。まずは疑ってかかり、安易に反応したりせず、増してお金の振り込みなどは絶対にしないようにしましょう。
悪質なメール、しつこいメールが続くようなら、迷惑メール相談センター(http://www.dekyo.or.jp/soudan/top.htm)や警察に相談されるのがいいと思います。



事件の教訓

怪しいと思ったら弱気にならず、徹底的に無視しよう!


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